今回は、「草原における環境保全型節水灌漑モデル事業」日中共同技術プロジェクトの首席代表である中国灌漑排水発展センターの顧副主任に、お話を伺いました。
Q:本プロジェクトが開始されてから既に三年経ちましたが、これまでの得られた成果や課題をどうお考えでしょうか。また、プロジェクトの今後についてどのような期待をお持ちでしょうか?
A:
このプロジェクトを始めた時の中国側の考え方は明確であり、プロジェクトの実施により、中国の牧区水利にとって良いモデルを確立し、良い発展をもたらするものでした。
近年の中国と世界の潮流は同様で、持続可能な発展が非常に強調されており、持続可能な発展の重要な条件が環境、そして資源と協調性であるからです。事実、中国の牧区水利プロジェクトは、牧区水利の持続可能な発展と牧民の生計のレベルを高めることを出発点としています。我々は環境保護のみ重視し牧民の生活を無視することは出来ず、牧民の生活レベルを向上させると共に、環境保護も行わなければならないのです。しかし、過去の数十年の間は、国家はこれまで農業区を重視し、牧区への投資はほとんどなく、インフラ整備が不足し、牧区の過放牧を招き、同時に環境破壊も非常に大きいものでした。
牧区水利に関する投入が近年始まり、水利部は2002年に計画(注:全国牧区草原生態保護水資源計画)を作成しましたが、経験不足と各地の実施方法の違いにより、計画通りに実施することはできませんでした。我々は、この日中技術共同プロジェクトの実施を通じて、成果をとりまとめ、全国の模範となることを望んでいます。このため、プロジェクトモデル地区として選定する際、中国の牧区の二大重点地区で、類型が異なる新疆ウイグル自治区と内モンゴル自治区の2ヶ所を選んでいます。
このプロジェクトの三年間で得られた成果は比較的大きいと思います。例えば、現在、我々が編成している“「整備計画」策定マニュアル(以下「マニュアル」)”はその大きな成果だと思います。中国では、現在、牧区に対する水利建設の指導性のあるものは非常に少ない状況にあります。これまで国家は、長年農業区に投資していたため、農業区に関する資料は比較的揃っており、基盤がしっかりしています。しかし、牧区に対する計画、人員、技術力は比較的弱く、また水利部も牧区の担当部門は一つのみであり、全体的に見て影響範囲が狭いと言えます。したがって、我々はこの日中共同技術プロジェクト通して、いくつかの模範や基礎を作ることを希望し、さらに指導性のあるマニュアルの編成を理想としています。
このほか、このプロジェクトの良い点として、実際に体系的に試験データを収集していることがあげられます。以前の中国は、プロジェクトに投資し立ち上げることで満足するという良くない習慣があり、立ち上げ後の発展状況や管理が一定のレベルに到達しなくてもあまり気にしない傾向がありました。このプロジェクトでは、この2年間、データ収集とモニタリングを特に重視してきましたが、このプロジェクト以前、農村発展のための同様な事業へ投資をし、近年では投資金額が増えているものの、データ収集が疎かになっています。
私は、このプロジェクトに3つの良い点があると思います。1つ目はモデル地区の建設が模範的役割を果たすこと、2つ目は比較的詳しい体系的なデータ収集を行っていること、3つ目はマニュアルを編成していることです。このプロジェクトの投資金額は多くはありませんが、私はこのような成果を出せることを非常に満足しています。
しかし、このプロジェクトには不足な点もあります。投入資金と人的不足により、モデル地区としてカバーできる範囲が狭いと思います。例えば、内モンゴル自治区でのモデル地区は杭錦旗のみで、全自治区が対象ではありません。プロジェクト専門家が内モンゴル自治区の他の地区を調査した経験の通り、内モンゴル自治区でも東部と西部の違いが非常に大きいのです。新疆ウイグル自治区も同様で、中国にはカバーできていない他の牧区が多くあります。だから、私は研究をし、情報や資料を収集して、その不足部分を補いたいと思います。確かにプロジェクトは、(09年7月の新疆ウイグル自治区での暴動以降、日本人専門家が新疆へ出張できないことの)影響を受けていますが、現時点で、予期した成果が得られつつあります。
牧区に対する投資は今でもそれほど大きくなく、国家の一年間の投資額は数千万元であり、中国の広大な牧区に対する投資額は全体でも一億元に達していません。だから、我々はこのプロジェクトが中国牧区対策を促進させる力となることを期待しています。近年、内モンゴル自治区の環境の変化は比較的大きく、水利面での投資は大きいとは言えませんが、輪牧や禁牧などの他の対策は大きな影響を与えています。自然回復は草原回復のもっとも理想的な方法です。私は、近年の内モンゴル自治区の変化は大きく、回復も比較的良いと思います。専門家はよく内モンゴル自治区に出張しているので、この点は確認できていると思います。そして、このプロジェクトは全体の生態保護と環境保護に良い影響を与えると同時に、牧民の生活水準の向上を促すものであると期待しています。さらに、私は、これまでの数年間、国家の水利面での投資の多くが危険なダムの改修に充てられ、その改修がほとんど完成したことから、今後は水利面での牧区に向けた投資が増えることを望んでいます。現在の中国は持続的発展を非常に重視しているので、今後、私は投入資金が牧区に向けられるべきだと考えています。
Q:日中交流や日中技術協力プロジェクトにどんな思いがありますか?交流や技術協力を通じて、どのような成果がありましたか?
A:
私はこれまでずっと日中交流は非常に必要だと感じていました。中国と日本は似ているところが多く、そして日本の発展は中国より先を進んでいます。今の日本が直面している問題は、これからの中国に起こる問題であり、過去に日本が直面して解決した問題は、現在の中国の問題です。この数年間の交流と協力を通じて、中国の農村水利の発展に対して非常に良い影響を与えているため、今後も継続をすべきだと思います。
日本には本当に良い理念が多くありますが、中国で言えば全て新しい理念です。例えば、日本が取り組んできた水田の汎用化、農村の水環境の整備は、今直面している中国の重大な問題です。特に水環境問題は、中国で最近重要視され始めたばかりですが、日本では長い間研究されてきています。それ以外に、日本で最近取りくまれている灌漑施設の更新整備では、全ての施設の評価が行われています。我々もこのことを考えていて、既に一部は開始し、また一部は準備しています。これらの問題は、全て現在の中国で直面している問題です。中国の大型灌漑区では、節水改造が既に数十年行われていますが、実際上の問題については詳しく分かっていません。日本ではまさにこの問題の研究が進められており、我々はこの問題の研究に取り組み、日本の多くの経験を手本にしたいと思います。
日中の交流は中国から言えば非常に有意義です。現在、情勢の変化は非常に速いので、今後の交流方法については、継続して協議していくことができます。今年来中した日本の農林水産省代表団との日中農業水利交流会では、日本側が双方の共通の問題を共同研究するという内容を提案されましたが、私はこのような交流方法は非常に良いと思います。双方に共通する問題だけでなく、一方の関心がある問題についても検討することもできると思います。日本側が関心を持っている問題もあれば、中国側が関心を持っている問題もあり、双方が違った関心を持っていることはありえます。ただ、やはり中国側が直面している問題が比較的多く、なかでも用水戸協会や土地改良区といった分野については、日本の経験は非常に多いことから、中国側が参考にすることができると思います。中国では農地に関する農村水利改革の良い方法を今だ見い出せておりません。現在農民用水戸協会の普及を推進していますが、一部の地方では良い結果を得ていても、各地方の発展にバラつきがあります。日本はこの分野における法律や各種計画の制定が中国より相当優れているので、中国は日本の経験を参考にすることができます。だから、私は日中交流と日中技術協力は非常に必要だと考えています。
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